色々と気づきを得ることができる本、翻訳は最低レベル 「吸引力の落ちないタダひとつの掃除機、ダイソン」を開発した、ジェイムス・ダイソンの自伝である。色々な視点で示唆にとんでいるし、気づきを得ることもできる。
例えば、当時の英国(現在の日本)のファイナンス中心のビジネスに対する批判であるとか、革新的な発明をするための気の遠くなるような根気強い開発の姿勢とか。また、アメリカでのライセンス売込みを通して、いかにもな資本主義の裏面の話などは、非常に興味深い。
しかし、これらの話は、年代順の記載のために、とびとびに記載されているため、全篇を読み通しての、印象としてしか残らないかもしれない。
現在は、「予想に反して」であり、邦題とは程遠い。邦題に見て取れるように、編集者は、毛色のかわったビジネス書として売込もうとしてのであろうか。翻訳もそれにあわせてか、「くだけた」口語調にしているのだが、翻訳の正確性が「くだけた」ために、かえって読みにくくなっている。原文にあたらずとも、日本語そのものが不明な箇所が多く見受けられる。また、日本にはなじみの少ない人名や社名が言及され、その人や会社を知らないと意味がわからない文面があるにもかかわらず、「訳注」が全くなく、不親切きわまりない。
ビジネス書中心の「日経BP社」が発行元だけに、猛省して、再販のあかつきには、全面的に翻訳を見直して欲しい。
ビジネス書を超えた一冊 これまで「常識」だと思わされていた、掃除機の紙パックが「なぜ必要ではないのか」を熱っぽく語っています。また、ダイソン、デュアルサイクロン掃除機の先進性をもって、これまでのどのようにしてその成熟市場に風穴を開けてきたのか、痛快に説明されています。成功した企業家が書いたビジネス書よろしく、手前味噌な見解も見受けられますが、経営者的視点のみならず、中世美術史・デザイン史といった切り口から英国を含む西欧諸国の民族的・文化的思想に至るまで著者の駆け抜けてきた背景が読み取れて、興味深い一冊です。 ただ、一点だけ、残念で仕方が無いのは邦訳の質の低さです。「樫村志保」さんという方が翻訳しているようですが、随所に(気がつく限り40箇所以上)英文日訳の荒さが見られ、中には全く別の意味に翻訳されている箇所すらあります。日本語にしかない微妙な言い回しやニュアンスをもっと大切にしていただきたかったと感じます。
ちょっと大げさ、その分感動 とても、力強い文章で楽しく読めます。 ただ、自分の発明を過度に評価しているのは、この人の良い点でもあ り、同時に鼻につく点でもある。。。 まあ、これくらい自分の発明に自信を持てということでしょうか? ただ最後の章で、ダイソン・デジタルモータのことを、ダイソンによ るモータが発明されて以来の唯一の進歩といっているのが、ちょっとム カついた。 ブラシレス・モータとほぼ同じそのモータはダイソン以外で既に使われ ているし、ダイソン社で発見、発明されたものでもない。さすがにダイ ソン社のWebでは「再発明」と言い方を変えているが・・・。 正直、同様の誇張がそこらじゅうにあるのではという、後味の悪さと ともに読み終えた。
ベンチャーの応援歌 「逆風野郎!」とは何とも笑えるタイトルである。 ベンチャーを志し、山あり谷ありの起伏に富んだ人生を歩んできたジェームズ・ダイソンが自らの半生を振り返った自伝である。 日本の電気メーカーの独壇場である家庭電化製品(電気掃除機)に独自のアイデアで挑み、見事勝利を獲得した成功物語は、人間の創造力と信念の尊さをクローズアップして、実に爽やかな読後感である。 著者はベンチャーと言う困難な人生目標を大いに楽しみ、なおかつ日常生活(掃除のこと)に革新をもたらして、世の人々を幸福にしている。 近頃めっきり聞かれなくなった「信ずるものは救われる」という人生哲学に新たな確信を与えてくれる好著である。
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